わたしの詩

木立

下品だった言葉とか行為のみが記憶にのこる風の朝 木立のあいだを男がおおまたに横切った(2024.3.9.)

眠り

眠りは ちいさな死だから 十三のころから 眠りたくなかった 本を読みあさり 深夜疲れ果てるまで 音が消えた町や村を 歩いた ちか頃は 深夜目覚め ときにアルコール ときにはちいさな詩を

犬と猫

子どものころ 田舎の犬と猫は 老いてくると或る日 ふいに帰らなかったものだ。 都会では或る日 ふいに歩けなくなり 或る朝ふいに 冷たくなるのだ。

季節には 囀りをかわし 季節には はなれ離れに はい卵をし 季節には 子を棄てる そんな 鳥のように 生きた

"どろんこパーク"

もしもまたうまれかわってこれたならまたわたしのこどもにうまれてほしい。

かたむき

ひめくりカレンダーが吊られている。すこし傾いているところが、信用できそうな気がする。

"挑む"

しごとはおもしろいからするそうおもえなければかわいそう ほんとのしごとはだれもおしえられない わからないひとはしつもんしてもわからない ほんとのしごとはしごとのほんしつ わからないひとはほんしつがわからない わからないからほんしついがいのわかる…

言葉

わたしはことばがなければそんざいしなかったことばとめぐりあえうんがよかった ことばをさがしことばをうたがう めぐりあいもあるじぶんであったりおとうとであったりくもであったりうんがよかった

"1995年9月7日木曜日死去84才"

男は終生未練だった。未練を処理できなかった。明らかに視ることができなかった。諦めることもできなかった。赦しきることができなかった。嫌悪しきることもできなかった。むぞいとしかいえなかった。

"香"

染井吉野の花にかすかな香があることをはじめて知った 回転することなく花びらが散った 聖路加の花にご挨拶をしたまた来年。

茶碗

2022年3月13日 お茶を淹れたときはじめてうつくしいとおもえる茶碗。ひとりではなにかたりないそんな茶碗が好きだ。

2022年3月13日 花が無い花屋のはなし萎れてもかれはてるまで観るのだという

"紙飛行機"

あしをあらうおとこのせをみるわたしがめんどうをみなければいけないのに さきにしねばあなたがかわいそうあとにしねばわたしがかわいそう 紙飛行機は微調整がひつようなんですよ老人は言いながら膝をかがめいっしゅん翔んだ

'未來'

さきにしねばあなたがかわいそうあとにしねばわたしがかわいそう 紙飛行機は微調整がひつようなんですよ老人は言いながら膝をかがめしゅんかん翔んだ

'未來'

はじめに言葉がうまれるそれからわたしがうまれる 好奇心と拘りから樹もくが芽生えそれからきみと会える

きもちよくめざめたあさは

きもちよくめざめたあさはびぜんやはぎなどにいってみたいとおもうせんぞだいだいのくるいきれなかったしゅうねんとまれにくるったしゅうねんとにであえることがあるからだ すざん ゆうほう じゅうろく えいぞう とうくろう

五月

釣れても食べない魚を釣ろうとする人がいる鉄橋の陰 汗ばみしゃがんで列車の音をきくおい雀おまえはまずそうだな(うるさい(干からびた死にぞこないめ

詩について

詩について考えることがある。詩は、一瞬のセンチメンタルとか一瞬の言葉の飛翔ではなく、たとえば朔太郎の詩は何を読んでみても、そこにあるのは朔太郎の寂寥の一貫した方向性である。朔太郎をはなれた一瞬のセンチメンタルも、朔太郎をはなれた一瞬の言葉…

幸という字は、 亀甲文字では、 手錠に繋がれた人。 もともと、 しあわせは、 巡り合わせのこと。

ポスターが微風にふかれ 半分めくれている 小学生の女の子が駆け寄り ポスターを押さえ しっかり貼る 拍手をする きみは素晴らしい女の子だね きみは必ず幸せになれるよ 女の子がふりむき微笑む ジロドウの間奏曲の冒頭に似ている 主人公の検察官が朝の出勤…

三崎

夜の波止場に 透明なガラスの 電話ボックスがある 潮のあいまに 対岸の灯が揺れる

☨ ふこうは ふこうのかたちをして 出勤する

☨ わたしが樹になったら わたしはきっと 気が狂うだろう 樹は一生 何処にも行けないのだから

*

ハリヤードが 金属音を発し 激しく揺れる しぶきが つぶてのように 全身を打つ 顔を打つ 全員ウサギのように 充血する 200mクラスの タンカーが 消えては 現れ 現れては 消える 船底が 大きく持ち上げられ 海面に 叩きつけられる 海水がデッキを覆い 躰が浮…

*冬のコスモス

冬に咲くコスモスを見た 水分の蒸発を 拒否するかのように 花弁と葉の ことごとくを縮め 枯れ木のようにたち 真紅の花を咲かす

*指圧について

その人の体が 今日はどんな状態で 何を望んでいるのか それを理解することが 最も重要です 同じような症状でも 人により 時により 異なりますから その違いを わかることが 指圧なのだ と思います そこから 必要な指圧の技術が 工夫されてくる と思います 初…

*夏の終わり

行ってきます というと さようなら と子どもが言う 九十九里の 吉原さんの砂とり 焚き火のまわりでは 草野さんと 山本さんの はだか踊り

*あなたに

あなた というよりは わたし のなかのあなたに 興味があります わたし というフィルターに 興味があるわけです わたし に興味がなければ あなた に近づくことが できないから

*問

あなた だいじょうぶよね わたしが死んでも ああ だいじょうぶに きまってる あなたはきっと そんなふうに 答えたんだろうね

*昨日のこと

ニホンコウツウの スズキです、 と挨拶された。 初めてである。 何年生まれですか、 と聞くと、 昭和10年、とのこと。 亥ですか、 と聞くと、 まあそんなところです。 長いんですか、 と聞くと、 ええ、10年ちょっと。 とのこと。