わたしの詩
釣れても食べない魚を釣ろうとする人がいる鉄橋の陰 汗ばみしゃがんで列車の音をきくおい雀おまえはまずそうだな(うるさい(干からびた死にぞこないめ
詩について考えることがある。詩は、一瞬のセンチメンタルとか一瞬の言葉の飛翔ではなく、たとえば朔太郎の詩は何を読んでみても、そこにあるのは朔太郎の寂寥の一貫した方向性である。朔太郎をはなれた一瞬のセンチメンタルも、朔太郎をはなれた一瞬の言葉…
幸という字は、 亀甲文字では、 手錠に繋がれた人。 もともと、 しあわせは、 巡り合わせのこと。
ポスターが微風にふかれ 半分めくれている 小学生の女の子が駆け寄り ポスターを押さえ しっかり貼る 拍手をする きみは素晴らしい女の子だね きみは必ず幸せになれるよ 女の子がふりむき微笑む ジロドウの間奏曲の冒頭に似ている 主人公の検察官が朝の出勤…
夜の波止場に 透明なガラスの 電話ボックスがある 潮のあいまに 対岸の灯が揺れる
☨ ふこうは ふこうのかたちをして 出勤する
☨ わたしが樹になったら わたしはきっと 気が狂うだろう 樹は一生 何処にも行けないのだから
ハリヤードが 金属音を発し 激しく揺れる しぶきが つぶてのように 全身を打つ 顔を打つ 全員ウサギのように 充血する 200mクラスの タンカーが 消えては 現れ 現れては 消える 船底が 大きく持ち上げられ 海面に 叩きつけられる 海水がデッキを覆い 躰が浮…
冬に咲くコスモスを見た 水分の蒸発を 拒否するかのように 花弁と葉の ことごとくを縮め 枯れ木のようにたち 真紅の花を咲かす
その人の体が 今日はどんな状態で 何を望んでいるのか それを理解することが 最も重要です 同じような症状でも 人により 時により 異なりますから その違いを わかることが 指圧なのだ と思います そこから 必要な指圧の技術が 工夫されてくる と思います 初…
行ってきます というと さようなら と子どもが言う 九十九里の 吉原さんの砂とり 焚き火のまわりでは 草野さんと 山本さんの はだか踊り
あなた というよりは わたし のなかのあなたに 興味があります わたし というフィルターに 興味があるわけです わたし に興味がなければ あなた に近づくことが できないから
あなた だいじょうぶよね わたしが死んでも ああ だいじょうぶに きまってる あなたはきっと そんなふうに 答えたんだろうね
ニホンコウツウの スズキです、 と挨拶された。 初めてである。 何年生まれですか、 と聞くと、 昭和10年、とのこと。 亥ですか、 と聞くと、 まあそんなところです。 長いんですか、 と聞くと、 ええ、10年ちょっと。 とのこと。
穴を掘り 産卵する 複数の雄が 射精する 誰の子か 分からない 誰に似るのかも 分からない
分かるって 何だろう 状態のことだろうか 理由のことだろうか 分かって どうするのだろう 諦めるのだろうか 許すのだろうか
ほんとうは いいたいことは なにひとつない だから どもるしかない
隅田川のほとり ぼくの脚もとで 土鳩が ぼくを見上げる 右目で見上げる 次は左目で見上げる 同じように 見えるのだろうか 言葉が異なるから わからない 言葉が同じなら わかるだろうか
はじっこで眠る 右へ行っても 左へ行っても はじっこがある 上へ行っても 下へ行っても はじっこがある はじっこに 囲まれて眠る はじっこのむこうから ぼくを呼ぶ声が 聞こえる
受け止めて もらえぬ かなしみと 受け止める ことのできぬ かなしみの はざまで 兎は 固まってしまう しかないのだ