わたしの詩

幸という字は、 亀甲文字では、 手錠に繋がれた人。 もともと、 しあわせは、 巡り合わせのこと。

ポスターが微風にふかれ 半分めくれている 小学生の女の子が駆け寄り ポスターを押さえ しっかり貼る 拍手をする きみは素晴らしい女の子だね きみは必ず幸せになれるよ 女の子がふりむき微笑む ジロドウの間奏曲の冒頭に似ている 主人公の検察官が朝の出勤…

三崎

夜の波止場に 透明なガラスの 電話ボックスがある 潮のあいまに 対岸の灯が揺れる

☨ ふこうは ふこうのかたちをして 出勤する

☨ わたしが樹になったら わたしはきっと 気が狂うだろう 樹は一生 何処にも行けないのだから

*

ハリヤードが 金属音を発し 激しく揺れる しぶきが つぶてのように 全身を打つ 顔を打つ 全員ウサギのように 充血する 200mクラスの タンカーが 消えては 現れ 現れては 消える 船底が 大きく持ち上げられ 海面に 叩きつけられる 海水がデッキを覆い 躰が浮…

*冬のコスモス

冬に咲くコスモスを見た 水分の蒸発を 拒否するかのように 花弁と葉の ことごとくを縮め 枯れ木のようにたち 真紅の花を咲かす

*指圧について

その人の体が 今日はどんな状態で 何を望んでいるのか それを理解することが 最も重要です 同じような症状でも 人により 時により 異なりますから その違いを わかることが 指圧なのだ と思います そこから 必要な指圧の技術が 工夫されてくる と思います 初…

*夏の終わり

行ってきます というと さようなら と子どもが言う 九十九里の 吉原さんの砂とり 焚き火のまわりでは 草野さんと 山本さんの はだか踊り

*あなたに

あなた というよりは わたし のなかのあなたに 興味があります わたし というフィルターに 興味があるわけです わたし に興味がなければ あなた に近づくことが できないから

*問

あなた だいじょうぶよね わたしが死んでも ああ だいじょうぶに きまってる あなたはきっと そんなふうに 答えたんだろうね

*昨日のこと

ニホンコウツウの スズキです、 と挨拶された。 初めてである。 何年生まれですか、 と聞くと、 昭和10年、とのこと。 亥ですか、 と聞くと、 まあそんなところです。 長いんですか、 と聞くと、 ええ、10年ちょっと。 とのこと。

*魚のはなし

穴を掘り 産卵する 複数の雄が 射精する 誰の子か 分からない 誰に似るのかも 分からない

*わかる

分かるって 何だろう 状態のことだろうか 理由のことだろうか 分かって どうするのだろう 諦めるのだろうか 許すのだろうか

*吃り

ほんとうは いいたいことは なにひとつない だから どもるしかない

*鳩

隅田川のほとり ぼくの脚もとで 土鳩が ぼくを見上げる 右目で見上げる 次は左目で見上げる 同じように 見えるのだろうか 言葉が異なるから わからない 言葉が同じなら わかるだろうか

*はじっこ

はじっこで眠る 右へ行っても 左へ行っても はじっこがある 上へ行っても 下へ行っても はじっこがある はじっこに 囲まれて眠る はじっこのむこうから ぼくを呼ぶ声が 聞こえる

*兎

受け止めて もらえぬ かなしみと 受け止める ことのできぬ かなしみの はざまで 兎は 固まってしまう しかないのだ