リーズナブルブルース

 横浜の職安の近くに立ちんぼが集まる場所があった。立っていると躰に墨を入れた男が寄ってきて、決まったかと聞いた。沖仲仕だが弁当付きで二千二百円だと言う。欲を掻くと職に溢れた。22才大学5年目の時である。
 小さな艀に分乗し湾外の大型貨物船に向かった。船内の貨物整理である。監督がいなくなると数人の若者が貨物の陰に隠れた。日当に見合ったリーズナブルな働きかただと考えたのかもしれない。デッキの日陰で弁当を食べている私の汗ばんだ躰を、五月の海風が吹抜けた。