すばらしいお手紙なのでご紹介させていただきます。


漂流郵便局 8


「初恋の人は散華いたしました」


<私事で恐れ入りますが、私の初恋の人は江田島海軍兵学校生徒でありました。彼は航空兵として志願し、特攻兵として九州から沖縄に出撃して敵艦に突入し、散華いたしました。23歳でありました。いずれ彼の元に行くであろうまで、恋しい人あてに手紙をしたためさせて頂きとうございます>


<浩之さん、お正月に、愛知にある航空博物館に行ってきました。ゼロ戦を見るうち、涙がこぼれました。おおぜい亡くなられた若者の中に、浩之さんもいらしたのね。もう73年も月日が流れましたが、今でもあなたの面影が胸から去りません。最後のお手紙の文面も、胸に焼き付いています>(2018年1月)
<わたし今、戦争や特攻の本を読んでいます。あなたの搭乗されたゼロ戦、切り抜いてノートに貼っています。あの時代、いまの若い人に理解できるのかと思いますが、思いの外、大勢の方に特攻に関する本が読まれているそうで、現代の若者にも胸うつものがあると思います>(18年2月)
<貴郵便局が、天国に通じる電話のように思えます>と書かれた手紙には、「数え89歳のおばあさん」とあった。
いずれも便箋4枚ほどに、細かい文字が並ぶ。


6月6日 夕刊 読売新聞